佐野:あれですよね。こういう話のときに、しょっちょう言われてるけど、アニメ以外も映画とかめちゃくちゃ見まくったほうがいいとかありますよね。そんなことないですかね。
吉田:あ、うん。そうだね。でもそれが偏ってても悪くはないと思う。
渚:観たい映画だけでいいんじゃね?
神志那:無理することはないよ。
石井:無理せず好きなものだけ。それが結局その人の特色になっていくという感じの。それこそ、アニメだけでも、色んな作品観てればそっちのほうでどんどん特性ついていくと思うんで。
渚:なんかさ、芸大いたころさ、自己表現しなきゃって思ったときに、結局自分の好きな世界観を突き詰めていって、映画とかでも何でも。好きな画家でも何でも。で、自分の中でこの人の絵大好きだけど、どこが自分と違うかじゃないけど、この部分だけ自分が好きになれない部分みたいなのを探していく作業してたから。だから、自分の好みにどんどん近い人を見つけていきつつ、でも自分だったらこうしたっていう部分を探っていく作業を芸大時代にずっとしてたから。映画観るでも何でも。だから、なんだろ、わざわざ自分の好みに合わない作品までちゃんと突き詰めてみる必要なかった感じするんだけど。
佐野:ああ。でも、映画観ていく中で、こういうのが好きだって言うのが生まれるのと同時に、これだけは許せねえっていう映画もでてくるじゃないですか。そういうのを見つけるのも大事かなって思って。
石井:あと、色んなもの観とくと、共通認識として誰かが出した言葉が分かったりするんで。だから演出さんとかが、この映画のこういうところっていうふうにいっても、自分の好みと合わないからみてないってだけだと、結局わかんないじゃないですか。だから分かんない作品とか言われると雰囲気が伝わんなかったりする。でも、色んな作品を一応かいつまんでみてたりすると、「あ、ああいうことがやりたいんだな」とかが伝わったりとかするんで。そこも、それこそ、学生時代に日曜洋画劇場をゴロゴロしながら見てたりっていうのもある意味知識になってるところもあるとは思いますけどね。
吉田:いま佐野君がアクションの決めが好きとか、俺フォローが好きとかあったけど、30分のアニメの中で色んな属性が必要なわけじゃん?きれいに見せるところがあったりとか、アクションがあったりとか、演技が必要とかって。色んなアニメーターがいる中で、一班あったら属性が分かれるからさ。振り分けをするときに、その属性にあった振り分けをするから、自分の好きなことが伸びてればそれはそれで作監からすれば使い勝手があるから、やっぱ伸ばしてていいと思うんだよね。
佐野:そうですね。
吉田:だから結構そういうわがままさが結局生きるって所もあるし。
石井:そうですね。結局のところチーム戦なので。(アニメを)一話作るのって。別に一人で全てをやるわけではなかったりするので。
吉田:だから、自分の属性がはっきりするのは別に決してつぶしが利かなくなるわけじゃない、っていうのがアニメーターの面白いところかなって。
石井:そうですね。方向性みたいなのが分かったっていうか、周りが認識してくれるようになると、そういうので仕事が来るので、そういう方がこっちのやる気も出るし、幸せなのかなって。
石井:あれですよ、佐野さんがアクションとかいまめっちゃ描いてるじゃないですか。その中で実を言うと影でこそこそがんばってて、いきなりバーンと表情すごいいい芝居とか描き始めたりとかしたら、そういうのもかっこいいとは思いますけどね(笑)影でこそこそじゃないですけど、渚さんがおうちでやってる作業みたいな感じで
神志那:おうちでやってる作業(笑)
吉田:そっちが本体だけど(笑)
渚:本体って言わないで!(笑)
佐野:理想は何ですかね、任されたコンテの内容を全部できたら・・・。
石井:どこでも選べるってのはすごいうらやましいですよね。やっぱ自分じゃ手が届かないって思うときあるじゃないですか。コンテ見てて。それが無くなるってのが理想としてはでかいですね。
渚:え、じゃあ佐野さんって決めを描くこともできるしアクションもできるしけっこうすごいっすね。
神志那:すごいと思う。
石井:うん。だからこのままどんどん、レベル上げていけばいいんじゃないかなって。
吉田:うん。でも色んな属性があるから、多分佐野君はね、飲んでたお茶を置いてね、見てたテレビのスイッチを切るって言うのはあんまり興味がないと思う。
佐野:だぁー!もうできないっすよ、そんなの!
(一同笑)
佐野:おれ、ほんと日常芝居ほんと無理なんで。
吉田:そういうのが上手い人もいる、というかそれがはまる人もいるから。
佐野:てかなんで吉田さん俺のことそんな分かるんですか?
(一同笑)
神志那:もう兄貴と呼ぶしかないね(笑)
佐野:俺より分かってる感が・・・
渚:自分のことはあんまりわかんないですよ。
吉田:自分のことはね。渚さんがいうから面白いよね(笑)
渚:え?なんで?
吉田:自分のことどれだけ把握してんの?
渚:私人任せなんで!なー、人の評価のほうがあってるしね。自分で自分の評価するより。
吉田:下手にバランス方にするとなんか面白くなくなっちゃうからいいと思うんだよね。
渚:でも私日常生活がすごくかっこよくかけるアニメーターに実はなりたい(笑)
佐野:でも一番すごい人な気がするなぁ。日常芝居がちゃんと描ける人は。
渚:うん。だって一番惹かれるもん。
吉田:でも俺ね、多分ね、渚さんが高畑作品に入ったらすぐアニメーターやめると思う。
渚:えー、何ー、それー。や、やめそうな気もするけど(笑)自分で分かってるもん。やめるやめるやめる。
吉田:延々とね、元気なく廊下を曲がるとかいうカットをやってると会社に来なくなるよね(笑)なんかそっとふすまを開けて布団に入って寝るとか、天井を見て泣くとか、(そういうのやってたら)多分やめると思う。
佐野:俺もやめますよ。
神志那:家での作業が多くなっちゃうよね(笑)
渚:自宅でずっとやってそう(笑)
神志那:違う作業をね(笑)
渚:違う作業じゃないですよ、ちゃんとやってますよー。・・・ハダカばっか描いてたりして(笑)
石井:むしろ布団に入ってあれするとか、全然意味が違う(笑)
渚:笑い事じゃないね(笑)
吉田:別にいいんじゃない?なんでもできなくても。
渚:でも日常芝居をかっこよく描けるようになりたいですよ!
石井:だからそういう目標があるのは絶対いいし、それに対しての映像とかを色々見てるのはすごくいいし。だから、まあ、それこそ入る前にやっておかなきゃいけないことは、ホントはちょっと自分が好きなものを見とくとか、やっとくとか。それが何っていうあれではなくてよくて、ほんとにただちょっと気になる程度でも見とくと、のちのちああいうのが描きたかったんだよなっていう時に・・・。
渚:ああいうのが描きたかったんだよなって思わせる人って、自分の持ってないものを持ってる人だったりすることってありません?
神志那:あるね。